UNIVERSITY OF TOKYO HOCKEY TEAM
東京大学運動会ホッケー部
Est. 1925
2015-10-29
君が人生の時
大野 陽介
「上下関係とか立場というものを越えて、共感によって人を動かせる事ができる人。
その共感を得るために、成功へのビジョンを抜群の解像度で指し示すことができる人。」
ある日見たNHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』での、マーケターの小林正典さんにとってのプロフェッショナルのあるべき姿だ。
特に、「成功へのビジョンを抜群の解像度で指し示す」という部分が心に響いた。
将来の理想を実現するために、未来が誰にも分からない中で、どこまで明確なビジョンを持ち、今この時を懸命に生きることができるか。
主将でも副将でもなく、幹部として部を強くする。
そう心に誓ってから強く意識していたことです。
明日からのインカレ、そして11月末の入替戦で、チーム全体が『共鳴』して目標を達成するために、今、自分は何をしなくてはいけないのか。チームはどう成長しなければいけないのか。
常に自問自答をして、また、チームメイトと話し合いを重ねることで、少しずつ自分たちのスタイルが確立してきたように感じる。
〜『共鳴』個が立ち、響き合い、大を成す〜
今年のチーム、BULLIONS2015のスローガン。
自分たちのスタイルを形作る上で、核となるもの。
自分にとっての『共鳴』のイメージは、漫画「SLAM DUNK」の山王工業戦で逆転決勝ゴールを決めたあとの桜木と流川のハイタッチだ。
性格も考え方も異なる2人が、バスケを通して繋がり、「共鳴」するかのように1人では到底出せないような力を発揮して、強者を倒して喜びを分かち合う。
それがチームスポーツの醍醐味だと思うし、それを俺はこのBULLIONS2015でやりたい。
ただ、自分自身、昔からそういう考え方だったわけではない。
去年までの自分は、自分の意見が他人に否定されるのを心の何処かで恐れていた。
大げさかもしれないけど、自分の考えが否定されると、自分自身の生き方や積み重ねてきたものが否定されているような気がして嫌だったんだと思う。
でも今年の『共鳴』っていうスローガンの下で少しずつ自分が変わっていくのを感じた。
自分の考えと他人の考えは違う。否定もされる。
でも目指す場所はいっしょ。
目標を達成して、「この瞬間のために俺たちはがんばってきた。」そう思いたいんだ。
共に目指す場所に向かって、みんながそれぞれの一生懸命の努力をしているなら、考え方が違うのは当然じゃないか。
そう思えてからが、本当に楽しかった。
自分は自分だから、みんなに合わせるんじゃなくて、俺なりの本気をぶつけて分かってもらいたいな、って思えた。
相手にわかってもらいたいけど、うまく伝わらないのが歯痒くて、でも息が合ったプレーができたら嬉しくて。
それを積み重ねていくのが楽しい。
だから別にみんなの考え方が同じである必要は無いと思っている。
そもそも、同じ考え方の人とだけ一緒にいるのは安心はするけど刺激的じゃない。
実際、SWとして1番そばにいるはずの同期の国府田とはめったに意見が合わないし、1個下のGKの松岡は性格が正反対だし、2年のルイスにはなんか怖がられてるし。笑
俺はそれはそれで良いと思っていて、でもその中で大事にしなくちゃいけないことは、“自分がどうしたいかを根気良く伝えていくこと”。
それと“相手の考えを一旦受け入れてみること”、だと信じている。
それが「響き合う」ために必要なことだと思うから。
みんなの本気がぶつかって、打ち消し合うのではなく響き合って、自分たちのプレーを洗練していく。
これを明日からのインカレでも実行していきたいし、最後の試合が終わる瞬間まで続けていきたい。
最後に、1人のプレイヤーとしてラスト1ヶ月に懸ける想いを。
個人的に転機となった試合がある。
9月中旬に行われた、一部校である法政大学との練習試合。
夏合宿を経て、チームの完成度が着実に高まっている実感を掴み始めていた中での試合。
前半は何とかなったが、後半に俺が小さなミスをきっかけに崩れて、チームも崩れた。
ボロボロの試合だった。
本当に恥ずかしい話だが、試合に出る4年生のGKに求められるものが、そのときになってようやくわかった気がする。
それは、
「自分がチームの柱にならなくてはいけないこと。」
主将の鈴木が今年のチームを引っ張ってくれる存在だということはわかっている。
それでも4年のGKの俺が折れると、チームは必ず崩れる。
だから何があっても、俺は崩れてはいけない。
むしろ、俺が逆境を跳ね返して、チームに勢いを与えないといけない。
そのために、どんなちっぽけなミスだって許さないし、どんなに鋭いシュートでも絶対止めないといけない。
一歩間違えれば即失点してしまう判断が難しい場面でも、俺が瞬時に決断し、チームに最適な指示をとばして守り抜く。
自分自身としてもそういう存在になりたいし、そうなることが4年のGKとして試合に出る責任だと思う。
思い返せば、怖いもの知らずの2年生のとき、俺は「相手が関東でトップだろうが全国でトップだろうが、俺が全部シュートを止めれば負けることはない。だから俺が全部止めてやる。そういうGKになってみせる。」って本気で思っていた。
しかし時は経ち、悪い意味で大人になったのか、シュートを決められても、「あの位置から打たれたらしょーがない。」だとか「そこはDFにがんばってもらわないと。」だとか。
どこか言い訳してしまう自分がいた。
ちっちゃい凡庸なプレイヤーになってしまったなー、と今になって思う。
でも最近の自分は変わった。
2年生の時の純粋にもっと上手くなりたかったときの気持ち。
院試勉強や合宿などでしんどかった夏を経て、ようやく取り戻すことができたように感じる。
もっと練習したい、もっと上手くなりたい、練習中の一分一秒が惜しい。
そう感じるほど、日々の練習にも熱が入っている。
そして法政戦を経て、遅くなってはしまったが、本当の意味で、チームの柱になる『覚悟』もできた。
俺はこのインカレでもっと強くなれるし、最後の試合が終わる瞬間まで強くなれると思う。
だから明日からの試合、何があっても必ず勝つ。
もっともっと強くなりたいから。
そして何より、大好きなこのチームで目標を達成したいから。
全員で闘って、全員で勝とう。