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2015-10-13

つなぐ

神武 真太朗

ホッケーをやっていて楽しいと思うこともあるが、未熟な僕には自分の実力不足を痛感し、思うように上達できない自分が情けなくなることの方が多い。
一年生の終わりの頃、下手くそな自分に腹が立っていた。なにをどうすればいいのかはっきり言ってくれない先輩やOBさんが何を考え、何を求めているのかもわからず、苛立ちばかりが募った。目標がどうとか言われても建前にしか聞こえなくなった。ホッケーなんてどうでもいいと思うこともあった。
そして一度、1年練習担当の先輩にそんな苛立ちをぶつけてしまった。とても失礼であったと思うが、その先輩は真剣に僕の言う事の一つ一つに答えてくれた。すぐに納得する事は出来なかったが、落ち着いてくると、自分のことしか考えず、求めもしなかったくせに与えられないことにいら立ちその苛立ちを他人にぶつけていた自分がとても恥ずかしくなった。先輩たちの考えの深さや本音を垣間見ることができたような気がして頭の中のもやもやが少しずつ晴れて行った。

学生主導と言えば聞こえはいいがホッケーに関する絶対的な権威のない東大ホッケー部が、経験豊富な監督、コーチ、選手が集まり、勝つための戦略が確立している一部上位校相手に互角に戦うことは可能なのだろうかと思ってしまうことがある。歴代の東大ホッケー部が成しえなかったことをどうしたら僕らは成しえるのだろうかと考えることがある。
以前、たまたま天理のOBさんとお話しさせていただいたときにそのようなことを言ったところ、
「東大には伝統がある。伝統は教えられるものではなく先輩やOBさん達の姿を見て自分たちで学んでいくものだ。時間をかけて作られた伝統を大切にしなさい。」
とおっしゃられていた。なるほど、その通りだと思った。
幸い、東大ホッケー部にはたくさんの先輩がいる。引退した後指導にきてくださるOBさんもたくさんいる。
では伝統とはいったいなんだろう。僕にできることはなんだろう。
自分にとってその答えの一つは、人をまねることであった。正直自分は瞬発的な判断が苦手だ。そんな自分にとって戦術理解には時間がかかる。だからまずは技術を磨くことに専念することにした。ストロークやレシーブの基礎的なものから応用的なものまで、わからなくなったらとにかく周りにきくことにした。うまい人のプレーを観るために動画を探した。そこで思ったことを練習で実践した。そしてわからないことがあったらまた誰かにきいた。このサイクルをくりかえすうちにホッケーと真剣に向き合えるようになっていった。徐々にではあるけれど、人が何を考えているのかを考えるようになった。

まだホッケーを始めて1年半の分際で少し大げさな気もするが、今自分がホッケーをやれているのは、困ったときに向き合ってくれる人たちがいてくれたからだと思う。お手本となってくれる先輩、身勝手な僕を受け入れてくれる同期、どんどんうまくなって不安を煽ってくる後輩、その他にもいろんな形で応援してくれる人たちみんなのおかげだと思う。そのすべてに感謝しているし、僕も他人にとってそんな存在でありたい、まだ未熟だけどできればホッケーで恩返しがしたいと思う。

だから、目の前にあるボールを味方へ、ゴールへつなぐ。
たとえプレーできないときでも、声で味方と味方をつなぐ。
そして、BULLIONSの伝統を、つなぐ。
それが僕の目標。

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